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  • 04/25/02:34

04.02.01:36

某所突発お正月ミニイベント

2007年1月、新春歌会と銘打ったミニイベントにて。
前の歌から一語とる……という形で続けていった。

*****

小僧の春 煩悩の数 108で足りず

くちびるに 紅のせひいて 笑む乙女 晴れ着姿の 誇らしげな顔

陰謀か あっというまの 一年間 次の年明け きっとすぐそこ

眠り猫 楼閣の上で 夜明け待つ 雪の匂いの 風まといつつ

すっぽりと 肩まで入って こたつむり 正月番組 見つつ転寝

甘酒を 飲む君の頬 薄紅の 浜の小さき 桜貝に似て

現世の 背の君と添う 初詣 縁を結びし 此の不思議かな

神仏に 両手あわせる 振袖の 乙女の髪に 星飾りひとつ

何を見た 首をひねるは 初夢の 記憶は清き 冷気の彼方に

凍てついた 大地に萌ゆる七草の やわらかな葉を 摘みし吾子の手

大人への 門出を祝う 成人の 酒杯に 戸惑いもなく
               *酒杯→さけ・さかずき

元旦の 朝餉の席で 襟正し 年玉待つ子の 期待の眼差し

追い込みの 冬の決戦 受験生 不安と期待に 心揺れつつ

約束の 春を待ちわび 文を読む 君の移り香 懐かしきかな

思い出の 写真みつめる 祖母の顔 娘時代の 晴れ着片手に

彩りを 思案し詰めた 重箱に ひとひら舞い散る 吉野の桜

客を待つ 床に一枝 寒桜

亡き恩師 思いて遠き 星仰ぐ 雪の兎に泣く声はなし

幼子が 雪駄を履きて 駆け回る 客の賑わい 庭に響きて

春告げる 水仙一輪 花ひらく 夜気に漂う かぐわしさかな

盃を 干して貴方に そっと出す 返盃ではなく おかわりちょうだい

知られざる 夢を紡ぎし 糸車 回す子どもの あいらしき指

寒椿 雪を被りて 重たげに 首を垂れるは 我が身にも似て

新月の 射干玉の夜の 明け眺む 声ぞ惜しまぬ 衣衣の朝
                      *衣衣=きぬぎぬ
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04.02.01:28

三語:お題「チョコレート・コオロギ・姪っ子」

 悪魔っ子が、やってきた。
 ――誇張じゃなくて、それは事実だ。
 悪魔っ子は、無邪気な顔で、時としてシャレにならないことをする。
 奇しくも、今日は十三日の金曜日。
 可愛い顔をした悪魔っ子は、今、夕食の準備をしているおふくろにくっついて回っていることだろう。
 ――なんだって、こんな日に。
 つるべ落としの、秋の空。暗くなった庭のどこかでは、俺のキライな虫たちが鳴いている。
 来週月曜からは、中間テストが始まる。夏休み明けの実力テストで散々な結果だったこともあり、今回のテストは気が抜けない。
 カチカチとシャーペンの芯を出しては、人指しの腹で引っ込める。何故、そんな無意味なことをするのか……答えは簡単だ、気が乗らないから。
 ハァッとため息をついた俺は、ふと机の上のテキストから顔をあげて、仰け反った。
「うわぁ……っと、びっくりするじゃないか」
 悪魔っ子が、そこにいた。
 にこにこと愛らしい笑顔で、俺を見ている。
「どうした? にーちゃん、今日は遊んでやれないんだ。ごめんな」
 きっと、勉強の邪魔をしに来たのだろう。
 夕食の準備をしているオフクロも、いくら可愛い孫とは言え、いそがしい最中にくっついて回られるのは迷惑なはずだ。
(体よく追い払われたかな)
 オヤジが帰宅していれば、嬉々として初孫の相手をするのだろうけれど、こんな日に限ってオヤジは飲み会で遅いらしい。
 悪魔っ子の両親、つまり俺の姉夫婦は、日曜の夜まで愛娘を迎えに来ない。
 姉夫婦は、遠方に住んでいる友達の披露宴へ出かけている。
 泊りがけで行くという娘の話を聞いて、可愛い孫を預かると言い出したのは、果たしてオヤジかオフクロか。
「……まったく、もう。可愛い息子が受験生だっていうのを、忘れているんじゃないのか?」
 ブツブツと小声で呟く俺を見て、悪魔っ子が、にこーっと笑う。
 ――うっ、この顔は。
 可愛い。ロリコンのケは断じてないけど、幼い姪っ子はマジで可愛い。
 しかし、この『にこーっ』は、これまでの経験からいうと、とっても危険なんだ。
「にぃちゃー?」
「……はぁい」
「とり、おあ、とりー?」
「…………は?」
 今のは果たして、何語だろう?
「にぃちゃ、とりー?」
 にこーっと笑って、悪魔っ子が右の手のひらを差し出す。
 この手は一体何だろう、と首をかしげた俺の目に、悪魔っ子が胸につけているバッジが映った。
 オレンジ色の、カボチャを繰り抜いて顔にしてあるデザインのバッジだ。
(ははぁ、なるほど、ハロウィンか)
 悪魔っ子の視線がチラチラと動いている。標的は、俺の机の上に載っているチョコレートの小箱の中身らしい。
「なんだ、チョコが欲しいのか? ハロウィンは今日じゃなくて、確か、月末あたりだぞ?」
 そんなことを言っても、まだ3歳にもならない悪魔っ子には、理解できないに違いない。
 にこーっと笑って、催促するように右の手のひらを更に俺のほうに突き出す。
「はいはい、チョコが欲しいんだな」
 オフクロのことだ。オヤツを欲しがる悪魔っ子に、「夕食前だからダメ」とでも言ったのだろう。
 イタズラ盛りの悪魔っ子も、おねだりをするために『にこーっ』をするようになったのか……ちょっと感慨深い気持ちで、俺はチョコレートの小箱の中に、無造作に指を突っ込んだ。
 掴もうとした個別包装のチョコが、俺の指先をサワサワとくすぐる。
(ん? なんだ???)
 悪魔っ子の顔を見ていた俺は、嫌な気配に凍りつく。
 ……サワサワ、サワサワ。
「にぃちゃ、とりー?」
 機嫌の良さそうな顔で、悪魔っ子が俺に聞く。
「おい……俺が見ていない間に、何か、入れたのか?」
「こーろぎ!」
 にこーっと笑った悪魔っ子の声が合図であるかのように、チョコレートの小箱からコオロギがピョンと飛び出して……。

 その後、俺が部屋中を女々しく逃げ回ったか、それとも男らしくコオロギを追い払ったか。
 あるいは、悪魔っ子がコオロギを掴んで俺を追い掛け回したか……答えは、聞かないのが『情け』というものだ。

*****

保存しておいたところから、原文ママで転載。
メモによると、2006年10月、所要時間約30分。