03.19.12:24
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04.02.01:44
六語
『祭り』『空』「夏影」「海」『メロンパン』『爆弾』を全部使うこと。
テーマは、「花火」。
*****
祭りの気配は、砂浜まで漂ってきていた。
空はとっくに夜の色で、目の前に広がる海は暗い。
『夏影』を聴きながら歩いていて、僕は彼女を見つけた。
見つけたのは、偶然じゃない。正確には、探していたんだ。
彼女は、浴衣姿で浜辺にひとり座っていた。
そっと近寄った僕は、右膝でトンッと彼女の背中をつついた。
「なっ……何だ、びっくりするじゃないの」
驚いた顔で振り返った彼女の手には、見なれたパン屋の紙袋が握られている。
「何それ?」
祭りにはテキ屋が出ていて、食べ物を売る夜店もあるのに。
そう思うと、ちょっとおかしくて、僕の声は揶揄を滲ませていた。
「アンタには関係ないでしょ」
少し声を尖らせて、彼女が中腰になった僕の耳からイヤホンを奪う。
ぶらんと首から垂れ下ったイヤホンを指先で弄っている僕と、浴衣姿で座っている彼女。
祭囃子はこの砂浜まで聞こえてくるけれど、今ここには、ふたりの他には誰もいない。
「どうせ、いつものメロンパンだろ」
「知ってるなら聞かないでよ」
そう言って、彼女はぷいっと明後日の方向に顔を背けた。
ほんのりと膨らんだ頬が可愛くて、僕は「さあ、どうかな?」なんて言ってみる。
「もしかしたら、中身は爆弾かもしれないじゃん」
「バカなこと言わないでよ。買ったのは私なんだから、中身くらい知ってるわよ」
あきれたような声に、ひそやかな笑いが混ざっている。
暗くて表情がよく見えないことを残念に思いながら、僕は彼女の隣、特等席に腰を降ろした。
ここから眺める花火が、一番美しい。
それは、毎年思うことで……。
僕にとって、いつも間違いのない真実だった。
*****
某所より、転載。
メモによると、2008年8月、10分か15分くらいで書いたものに、加筆修正してあるらしい。
テーマは、「花火」。
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祭りの気配は、砂浜まで漂ってきていた。
空はとっくに夜の色で、目の前に広がる海は暗い。
『夏影』を聴きながら歩いていて、僕は彼女を見つけた。
見つけたのは、偶然じゃない。正確には、探していたんだ。
彼女は、浴衣姿で浜辺にひとり座っていた。
そっと近寄った僕は、右膝でトンッと彼女の背中をつついた。
「なっ……何だ、びっくりするじゃないの」
驚いた顔で振り返った彼女の手には、見なれたパン屋の紙袋が握られている。
「何それ?」
祭りにはテキ屋が出ていて、食べ物を売る夜店もあるのに。
そう思うと、ちょっとおかしくて、僕の声は揶揄を滲ませていた。
「アンタには関係ないでしょ」
少し声を尖らせて、彼女が中腰になった僕の耳からイヤホンを奪う。
ぶらんと首から垂れ下ったイヤホンを指先で弄っている僕と、浴衣姿で座っている彼女。
祭囃子はこの砂浜まで聞こえてくるけれど、今ここには、ふたりの他には誰もいない。
「どうせ、いつものメロンパンだろ」
「知ってるなら聞かないでよ」
そう言って、彼女はぷいっと明後日の方向に顔を背けた。
ほんのりと膨らんだ頬が可愛くて、僕は「さあ、どうかな?」なんて言ってみる。
「もしかしたら、中身は爆弾かもしれないじゃん」
「バカなこと言わないでよ。買ったのは私なんだから、中身くらい知ってるわよ」
あきれたような声に、ひそやかな笑いが混ざっている。
暗くて表情がよく見えないことを残念に思いながら、僕は彼女の隣、特等席に腰を降ろした。
ここから眺める花火が、一番美しい。
それは、毎年思うことで……。
僕にとって、いつも間違いのない真実だった。
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某所より、転載。
メモによると、2008年8月、10分か15分くらいで書いたものに、加筆修正してあるらしい。
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